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特 集 |
この、「犬との共生に必要なマナー・家庭犬のしつけ方」は1〜10までをシリーズで載せていきます。 |
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今年の一月頃に私が受けた相談に、このような例がございました。生後十ヶ月の小型犬の牝で、飼い主さんはその犬を飼うのが三頭目だそうで、「一頭目、二頭目の犬たちの時はこんなことがなかったのに」とおっしゃるのです。お話を聞いてみますと、前の二頭の犬たちは自分なりにしつけも良くできて、何も問題行動が起きず、これは飼いやすい種類の犬と思い三頭目も同じ種類の犬を購入したそうです。 |
犬の攻撃行動の大半は、優位性、支配性の行動と言ってもよいと思います。今回の事故も飼い主の家の中で発生しています。犬は家や敷地内が自分の領域で、一番強気になれる場所なのです。その領域に他人が侵入してくるわけですから、犬にとってはたまったもんではありません。他人は友人宅に招かれ友好的な気持ちで訪問するわけです。ここで考えて頂きたいのが本当の犬の気持ちです。犬にしてみれば何とか領域から他人を排除しようと防御や縄張りに起因する攻撃行動に出るわけです。飼い主もその友人もこの時、犬の心理状態を擬人化して解釈してしまい、その結果、人と犬との間に大きな溝ができてしまうのです。愛犬家や犬に関わる人達は、決して擬人化することなく、犬の本能習性を理解した上で、犬の気持ちを考え対応しなくてはならないのです。 |
今回相談を受けたこの犬の場合、幸い、生後十ヶ月と若く、同時に攻撃行動が習性化していなかったため、早期に発生過程原因を究明し把握した上で、行動原因矯正療法を用い容易に確実に矯正ができました。もし、この場合、行動対症強制療法で対応したならば、唸ったり咬んだりした時、暴力的直接対決になり犬は人間に対する不信感が募るばかりで、一時的に治まったとしても永久的矯正は不可能です。 |
![]() 犬を無視して来客と並ぶことにより、犬に敵でないことを伝える |
それにしてもこの犬の場合、子犬の時から可愛い可愛いで育てられ、犬が家庭内で常に中心になり育っていった結果生じた状態、いわゆる権勢症候群なのです。犬が問題行動を起こす原因はその犬にあるのではなく、飼い主の犬に対する対応の仕方に問題があるのです。犬はあくまで犬なのです。人間とは違う動物なのですから決して犬に対して、擬人化した考え方や対応をしないことが、犬との共生に最も大切なマナーではないでしょうか。 |
【掲載は1999年(社)日本動物愛護協会の発行誌「動物たち」からを承認を得て掲載したものです】 (筆者 PD公認一等訓練士 藤井 聡) |
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