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特 集 |
この、「犬との共生に必要なマナー・家庭犬のしつけ方」は1〜10までをシリーズで載せていきます。 |
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私が愛犬家の方々にしつけのご指導をさせていただいている中で、「制御」という言葉と同様に「抑える」という言葉をよく使います。犬を制御することも、犬を抑えることも同じような意味ではありますが、「抑える」のは犬だけではありません。飼い主さんの犬に対する気持ち、「可哀相」とか「可愛い」という気持ちをご自身で抑えることができれば、自然に犬を制御することにつながるのです。そして、それが犬のしつけの第一歩なのではないでしょうか。 |
犬を飼い始めたら犬にもこのように規制したり制御したりしていただきたいものなのですが、なぜか犬には規制したり制御したりしないのです。犬が可愛いという気持ちを抑えきれずに、つい犬に、「どうしたの?何々ちゃん」「お水飲みたいの?それともお腹すいたの?」「お外に行きたいの?じゃあ散歩行きましょうね」などと言って、規制・制御するどころか、犬の欲求をすべて満たしてあげてしまう、犬の言いなりになってしまい、まるで受け身の状態になってしまうのです。飼い主さんが受け身の状態を続ければ、犬は自己の欲求を人に要求すれば満たされると学習してしまうのです。このようなことを毎日の生活の中で徐々に体得した結果、自己主張の強いわがまま犬ができあがるのです。人の子どもさんは、親御さんにとって可愛いから登校儀式のように規制しながらしつけをし、学校に通わせ教育しているのですから、犬にも同様にしつけと教育をしていただきたいと強く感じます。 |
私は、その子犬が大変小さかったので、少女の足元にいることに気づきませんでした。少女が何回かしゃがんでは立ち立ってはしゃがみとくり返す動作を見て、私は彼女は何をしているのかと思い、彼女の足元をふと見ると、そこには小さなシェルティーの子犬がいるではないですか。 |
![]() ベルギー式の家庭犬の訓練競技会 (ベルギーのサッカースタジアム) |
彼女は自分の子犬に「アフ・アフ」と言い聞かせていたのです。ベルギーの訓練用語で「アフ・アフ」とは「伏せ」という意味(声符)なのです。その子犬はしばらくは伏せてじっとしているのですが、その近くを犬を連れて人が通る度に、子犬は立ち上がりチョロチョロしだすのでした。その度に、彼女はしゃがみ両手で子犬を伏せさせ、「アフ!アフ!」と言っているのです。そんなことが四、五回続いた時彼女はついに子犬を仰向けに鼠径部呈示させ「アフ!」とひとこと言うと、数分間無言で鼠径部呈示させたまま制止させていました。その後、彼女は子犬を伏せの姿勢に戻し、もう一度「アフ」と声符を言い立ち上がり、競技を観戦し続けました。私は、その瞬間の彼女の子犬とのやり取りを一部始終見て、少女ながら的確な制御の仕方に感心させられました。それで思わず何枚も写真を撮ってしまったわけです。その子犬にしてみれば、大事な社会化期に多くの犬や人の中で、自分勝手に自由にはできない、飼い主に従わなくてはならないと学習し、良い社会化馴致になったことでしょう。また、少女はこの会場のリンクサイドで犬をきちんと制御できたことで、この犬のリーダーとしての地位を獲得したことになるでしょう。それにしても、この少女と子犬は将来ずっと良い関係を保ち、両者共に幸せになることと、強く感じさせられました。 |
【掲載は1999年(社)日本動物愛護協会の発行誌「動物たち」からを承認を得て掲載したものです】 (筆者 PD公認一等訓練士 藤井 聡) |
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