訓練とは、犬に命令や指示をして、そのとおりの動作や行動をさせ服従させることなのです。飼い主や指導手の目的とする作業を犬が、声符や視符に従い行動するのです。声符とは言葉の命令で、視符とは手の合図のことです。声視符を同時に併せて使う場合もあります。このように服従訓練では何らかの声視符指示を犬に与えて服従をさせるのです。訓練を始める場合でも、訓練の入っている犬の場合であっても、その犬を取り扱う人間が犬より上位の順位であることが基本的に重要になってきます。犬は群棲する動物で、その社会はすべて縦社会で形成されています。そして犬たちは縦社会の中で上位のものは下位の者に権勢し、下位の者は上位の者に服従するのです。一頭の犬に権勢本能と服従本能が拮抗しており、権勢本能を抑えることがしつけの部分で服従本能を発達させるのが服従訓練なのです。
訓練する人や犬の飼い方が、犬より上位の立場でいること、リーダーシップを発揮していることが訓練を始める時や訓練された犬に指示をして服従させる時に最も重要なことなのです。犬にしてみれば相手が自分より下位な人間、もしくは同等に近い存在であれば命令や指示に従わず無視をするのです。どんなに立派な訓練を施された訓練犬であっても、犬は相手によって態度を変えるのです。犬は大変順応性の高い動物です。
ですから人とも共生も十分可能なわけですが、縦社会の順位性は人と暮らしても決して変わることのない本能習慣なのです。その点人間同士は、環境や相手によって上下関係になったり同等な関係になったり互いに失礼のないようにお付き合いしながら対応するのです。ですからこの部分だけは決して擬人化した考え方や対応を犬にしてはならないのです。犬は、飼い主家族の一番下に従属させ順位付けさせて、飼い主と犬がよい関係を築いた上で訓練していかないと学習効果が上がらないのです。なぜならば犬の社会では上位の者は下位の者の言うことを聞かないという原則があるのです。
近年、日本の家庭内は昔と比べて変化してきてると思います。かつて「男尊女卑」というような男性を尊び女性を軽視する考えや態度が、日本の伝統的な文化の現れだった時代、父親が家長として絶対的な権威を持ち、家庭内は完全な縦型に形成されていたのです。このような家庭に犬が迎えられた場合、犬は家長を群れのボスと認識し、家族の下に従属する犬になるのです。しつけや訓練を特にしなくとも扱いやすい犬になるのです。このように犬が飼われる家庭内の環境が大変重要な影響を与えるのです。近年、日本の家庭内環境が大きく変化し、親子兄弟が平等な横の繋がり、友達的な感覚で家族が生活していれば犬は誰が群れのボスか判らず自らボスに成り上がろうとしてしまうのです。本来犬は頼れるボスに服従し、尊敬できるリーダーを求めているのです。また犬はそうしていることのほうが幸せなのです。犬を飼い、しつけや訓練をすることも必要ですが、飼い主とその家族全員がリーダー的対応に心掛けることが大切なのです。
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